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広報 2026.04.24

SSTとは何か?|発達障害の子どものソーシャルスキルトレーニング解説

SSTとは何か?|発達障害の子どものソーシャルスキルトレーニング解説

「お友だちとうまく遊べない」「感情が爆発してしまって、どう関わればいいかわからない」——そんな場面にしばしば直面し、胸が痛くなっている保護者様も多いことでしょう。

お子さまが抱えている困難感は、決して意志の弱さでも、しつけの問題でも無いかもしれません。発達障の特性によって対人関係や社会生活に必要なスキルの習得が難しい場合、SST(ソーシャルスキルトレーニング)という支援が力になれることがあります。

この記事では、SSTの基本的な意義から具体的な方法・ステップ、受けられる場所、家庭でできる関わり方まで取り上げます。学校を卒業した後の自立した社会生活を見据えた支援として、SSTを一緒に考えてみませんか。

SSTとは何か、発達障害の子どもに必要な理由

「なぜ、わが子にすすめられたのだろう」と感じている保護者様に向け、SSTが何のために生まれた支援なのかをお伝えします。

SSTの意味と発達障害の特性との関係

SSTとは、Social Skills Training(ソーシャルスキルトレーニング)の略です。日常生活や対人関係に必要な社会的なスキルを、練習を通じて少しずつ身につけていくことを目的とした支援です。

たとえばASD(自閉スペクトラム症)のあるお子さまは、「場の空気が読みにくい」「気持ちをうまく言葉で伝えられない」といった対人コミュニケーションの困難が特性として現れやすいとされています。ADHD(注意欠如多動症)のあるお子さまの場合は、衝動的な言動や感情のコントロールの難しさが、人との関わりに影響することがあります。いずれも脳の特性に由来するものです。

対人関係に必要なスキルが自然に習得しにくい場合でも、SSTはその特性に寄り添いながら、学びの機会を丁寧につくっていく支援といえます。

ASD・ADHDの特性と対人関係、SSTの関係
ASD(自閉スペクトラム症)の特性
コミュニケーションの困難
場の空気の読みにくさ
ADHD(注意欠如多動症)の特性
衝動的な言動
感情コントロールの困難
気持ちを伝えにくい
関わり方に影響
対人関係への影響 いずれも脳の特性に由来し、社会的スキルの自然な習得が難しい場合がある
特性に寄り添う支援
SST(ソーシャルスキルトレーニング) Social Skills Training 日常生活や対人関係に必要な社会的スキルを、練習を通じて少しずつ身につけていくことを目的とした支援。特性に寄り添いながら、学びの機会を丁寧につくっていきます。
練習を通じた学び 特性への寄り添い 社会的スキルの習得
※ いずれの特性も脳の特性に由来するものであり、適切な支援により社会的スキルを身につけることが可能です

SSTで育まれる具体的なソーシャルスキルの例

SSTでは、日常生活の中で役立つさまざまなソーシャルスキルを、実際の場面を想定しながら練習していきます。

たとえば、あいさつの仕方(朝、友だちや先生に自分から声をかける練習)、気持ちの伝え方(「悲しい」「嬉しい」などの感情を言葉にする方法)、順番を待つこと(遊びや活動の中で落ち着いて待つ経験)、上手な断り方(相手を傷つけずに自分の意見を伝えるスキル)、表情を読み取ること(相手の気持ちを想像する練習)——こうした学校や家庭での社会生活に直結する内容が対象です。

繰り返し取り組むことで、お子さま自身の「できた」という経験が積み重なっていきます。

発達障害のある子どもにSSTが有効とされる理由

「なぜわが子はこんなにも人との関わり方が難しいのだろう」——そう悩んでいる保護者様にぜひ知っていただきたいのは、発達障害の特性によってソーシャルスキルが「自然に身につきにくい」場合でも、練習を通じて少しずつ習得できる可能性があるということです。

多くの子どもたちは日常の経験の中から暗黙のルールや他者の気持ちを自然と学んでいきますが、発達障害のある子どもたちにとってはその学びが難しいことがあります。意志の問題でも、しつけの問題でもありません。

SSTは「まだ学んでいないから、これから学べる」という視点から出発します。スキルを段階的に練習し、安心できる環境の中で経験を積むことで、コミュニケーション力を育てていく。お子さまの可能性を信じた支援として、多くの事業所や教育現場で実施されています。

SSTの5つのステップと実践例

SSTが実際にどのような流れで進むのか、具体的な場面を交えてお伝えします。「何をするのか、お子さまにとってどんな体験になるのか」がイメージできると、支援への安心感がぐっと深まります。

5つのステップの流れ

SSTは、①教示→②モデリング→③リハーサル→④フィードバック→⑤般化という5つのステップで進みます。この流れがあることで、お子さまは「見て、やってみて、学ぶ」という体験を段階的に積み重ねられます。

教示では「こんな場面ではこうするといいよ」と言葉で説明し、何をするのかをまず理解します。モデリングでは支援者や仲間が実際にやってみせ、「なるほど」という気づきを生みます。リハーサルはロールプレイを中心に、安心できる環境の中でお子さま自身が自分のペースで場面を試す時間です。フィードバックでは、うまくできた点を具体的に伝え、改善点もやさしく共有します。そして般化——日常生活の中で実際に使えるよう、繰り返し経験を積む段階です。

この積み重ねが、コミュニケーションスキルと社会生活への自信につながっていきます。

SSTの5つのステップ
1
教示
「こうするといいよ」と言葉で説明する
2
モデリング
支援者や仲間が実際にやってみせる
3
リハーサル
安心できる環境で自分のペースで練習
4
フィードバック
できた点を伝え改善点をやさしく共有
5
般化
日常生活で繰り返し経験を積む

子どもの日常場面を使ったプログラムの具体例

SSTのプログラムでは、お子さまが実際の生活で経験しやすい場面をテーマとして取り上げます。「給食の時間に友だちに声をかける」「気持ちが高ぶったときに落ち着く方法を学ぶ」など、身近な状況がそのまま練習の場になります。

「気持ちが伝えにくい」というテーマであれば、感情を言葉や表情カードで表現する活動を行います。グループの中で「今どんな気持ち?」と伝え合うことで、相手の感情を理解する力も自然と育まれていきます。

「伝わった」「一緒に考えてもらえた」という成功体験を積み重ねながら、楽しんで取り組める雰囲気がスキル習得の大切な土台です。

SSTを継続するために大切なこと

SSTでのスキル定着には、「繰り返し」と「安心できる環境」の2つが欠かせません。一度の練習で完全に身につくことは少なく、日常生活の中で何度も経験することで、スキルは少しずつ根づいていきます。

焦らず、お子さまのペースを大切にしながら支援を続けること。小さな「できた」の積み重ねが、長い目で見た自信と社会生活への意欲を育てていきます。

私たちナーシングでは、学校卒業後を見据えた意味ある支援として、SSTを日々の活動に組み込んでいます。お子さまの支援について、まずはお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。

SSTを受けられる場所と、家庭での関わり方

「どこに相談に行けばいいの?」「施設に通わせるだけで、自分にできることはないの?」——そう感じている保護者様もいらっしゃることでしょう。支援は施設だけで完結するものではなく、日々の生活の中にも実践できることがあります。

放課後等デイサービスや学校など受けられる場所

SSTを受けられる代表的な場として、放課後等デイサービスや児童発達支援の事業所があります。児童指導員や保育士、作業療法士や言語聴覚士などのスタッフのもとでプログラムが組まれており、グループ活動を通じてソーシャルスキルトレーニングに取り組めます。施設ごとにスタッフの専門性や支援内容が異なるため、見学や問い合わせで確認してみることをお勧めします。

学校内の通級指導教室でもSSTが実施されているケースがあります。「どこに行けばいいかわからない」と感じたとき、まずはかかりつけの相談窓口や事業所に連絡してみることが、支援への第一歩です。

SSTを受けられる主な場所と特徴
場所 対象 特徴 利用に必要なもの
放課後等デイサービス 就学児(6~18歳) 放課後や休日に通所し、グループ活動を中心としたSSTに取り組める。児童指導員や保育士などの専門スタッフが支援 受給者証(通所受給者証)
児童発達支援 未就学児(0~6歳) 早期療育として、遊びを取り入れた個別・集団SSTを実施。就学前の基礎づくりをサポート 受給者証(通所受給者証)
通級指導教室 通常学級在籍の小中学生 学校内で週1~数回、少人数でSSTを受けられる。普段の学校生活と連携した支援が可能 学校・教育委員会の判断
就労移行支援 18~65歳未満 就職に必要な対人スキルを実践的に学べる。職場を想定したロールプレイやビジネスマナーのSST 受給者証(障害福祉サービス)
医療機関(病院・クリニック) 年齢問わず 医師や心理士など専門家による医学的サポートを軸としたSST。精神科デイケア等で実施されるケースが多い 医師の診察・紹介
※施設ごとにプログラム内容やスタッフの専門性は異なります。見学や問い合わせで確認することをお勧めします。

家庭でできるSST的な日常の関わり方

家庭でのSST的な関わりに、特別な教材は必要ありません。朝の「おはよう」の練習や、食事中に「今日どんな気持ちだった?」と感情について話す習慣など、日常のやり取りそのものがトレーニングの機会になります。

「順番を守れたね」「気持ちを言葉で伝えられたね」と、具体的な行動を認める声かけも効果的です。「教える」より「一緒に考える」関わり方が、お子さまの学びをより深いものにしていきます。

家庭でできるSST的な関わり方
日常のやり取りがトレーニングの機会に
特別な教材は必要ありません。毎日の生活の中にある3つの場面で、
お子さまの社会性を育む関わり方ができます。
1
朝の挨拶の場面
保護者 おはよう! 今日もいい天気だね。
お子さま …おはよう。
声かけ 「おはよう」って言えたね! すごいね。
POINT 小さな声でも、目を合わせなくても大丈夫。「挨拶できた」という事実を認めることが大切です。
2
食事中の会話の場面
保護者 今日はどんな気持ちだった?
お子さま うーん…ちょっと悲しかった。
声かけ 気持ちを言葉で伝えられたね。教えてくれてありがとう。
POINT 感情に正解・不正解はありません。「教えてくれてありがとう」と受け止めることで、安心して気持ちを表現できるようになります。
3
ゲーム・遊びの場面
*
保護者 次は誰の番かな?
お子さま お兄ちゃんの番! 待ってるよ。
声かけ 順番を守って待てたね! かっこいいね。
POINT ゲームは「順番を待つ」「ルールを守る」「勝ち負けを受け入れる」など社会性を学ぶ絶好の機会です。

SSTで育む力が自立・社会参加へつながる理由

SSTで身につけたコミュニケーションスキルや感情のコントロール力は、学校生活だけで活かされるものではありません。卒業後の仕事の場や地域での社会参加など、日常生活のさまざまな場面で力を発揮します。

私たちナーシングが大切にしているのは、「学校卒業後を見据えた、意味のある支援」という姿勢です。今の練習が、将来の自立への確かな一歩につながると信じているからこそ、日々の支援に向き合っています。お子さまのことで気になることがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

まとめ

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。「わが子のために何かしてあげたい」という気持ちで検索された保護者様にとって、この記事が少しでも安心と前向きな一歩のきっかけになれば幸いです。SSTは決して特別なものではなく、お子さまの可能性を信じた、温かな支援の積み重ねです。この記事でお伝えした重要なポイントを改めて整理します。

  • SSTとは、発達障害の特性によって身につきにくい社会的スキルを、段階的な練習を通じて育む支援である
  • SSTは「教示→モデリング→リハーサル→フィードバック→般化」の5ステップで進み、安心できる環境の中で小さな成功体験を積み重ねる
  • SSTで育まれたコミュニケーション力や感情コントロールの力は、学校卒業後の自立・社会参加にも直結する長期的な土台となる

SSTで大切なのは、「まだできない」ではなく「これから学べる」という視点です。お子さまのペースに寄り添いながら支援を続けることで、日々の「できた」が積み重なり、将来の自立へとつながっていきます。ナーシングでは、学校卒業後を見据えた意味ある支援としてSSTを実践しています。気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。