療育お役立ち
広報 2026.05.31

感覚過敏の子どもに悩む保護者へ|原因・対処法と支援の受け方

感覚過敏の子どもに悩む保護者へ|原因・対処法と支援の受け方

「スーパーに入るだけで耳を塞いで泣き出す」「服のタグがどうしても我慢できない」などの場面に毎日向き合っている保護者の方は、どれほどの不安と疲労を抱えていることでしょう。

夜中にスマートフォンで「これはわがまま?それとも何か理由があるの?」と検索している方も、きっと少なくないはずです。お子さまの困った行動には、必ず理由があります。その理由を正しく知ることが、親子両方の苦しさを和らげる第一歩です。

この記事では、感覚過敏とは何か・発達障がいとの関係・家庭や学校でできる対応策から、診断がなくても使える支援の活用方法まで、ナーシングの現場知見を交えてお伝えします。読み終えたとき、「うちの子にも対処法がある」と感じていただけることを願っています。

感覚過敏とは何か?子どもの「困った行動」に理由がある

感覚過敏とは、音・光・触れる感覚などを人より強く感じてしまう特性です。「スーパーで耳を塞いで泣き出す」「服のタグが気になって動けない」という行動はわがままではなく、脳の感覚処理の特性によるものです。

ここでは、感覚過敏の定義から発達障がいとの関係、見落とされがちな感覚鈍麻との同時存在、そして感覚別のチェックリストまでをお伝えします。「うちの子に当てはまるかも」という気づきが、関わり方を変える第一歩になります。

感覚過敏の定義と発達障がいとの関係

感覚過敏があるからといって、必ずしも発達障がいとは限りません。診断のないお子さまを含め、幅広い子どもに見られる特性です。

ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)のあるお子さまに感覚過敏を伴う割合は高く、東京薬科大学の研究ではASD者の約90%に感覚の問題が見られると報告されています。ASDの診断基準であるDSM-5-TRでも、感覚過敏・鈍麻はASDの特性として明示されています。

ただし、「感覚過敏がある=発達障がい」ではありません。この事実を知るだけで、保護者の方が過度な不安を手放せる場合があります。診断の有無にかかわらず、困りごとがあれば専門機関への相談をお勧めします。

過敏だけじゃない:感覚鈍麻との同時存在という現実

「音に対して非常に敏感なのに、転んでも痛みをほとんど感じない」という状態のお子さまがいます。感覚鈍麻(かんかくどんま)と呼ばれる、刺激に対して鈍感な状態が感覚過敏と同時に存在するケースです。

ナーシングの現場でも、「過敏と鈍麻の共存」は決して珍しくありません。給食の匂いに強く反応するお子さまが、転倒しても泣かない、熱いものに触れても気づかないという場面に多く出会ってきました。

過敏と鈍麻は、同じお子さまの中で感覚の種類によって異なって現れたり、疲れや緊張によって切り替わったりします。「どちらか一方だけ」とは限らないこの現実を知っておくことが、正確な理解につながります。

わが子に当てはまる?感覚別チェックリスト

以下は、日常生活で保護者の方が気づきやすい行動例を感覚別にまとめたものです。いくつか当てはまるからといって診断が確定するわけではありませんが、専門家への相談のきっかけとして活用してください。

聴覚

  • スーパーや駅など、にぎやかな場所で耳を塞ぐ
  • 掃除機や乾燥機の音に強く反応する
  • 突然の音(くしゃみ、ドアが閉まる音)でパニックになる

視覚

  • 蛍光灯やLEDの光を極端に嫌がる
  • 人が多い場所で目を細めたり、視線を落としたりする

触覚

  • 服のタグや縫い目が気になって着替えを嫌がる
  • 特定の素材の服しか着られない
  • 他の人から触れられることを強く嫌がる

嗅覚

  • 給食の匂いや香水、柔軟剤の香りで気分が悪くなる
  • 特定の食べ物の匂いだけで食べることを拒否する

味覚

  • 食感が少し違うだけで食べられない
  • 特定の味や温度の食べ物しか受け付けない

前庭覚(ぜんていかく)(体の傾きや動きを感じる感覚)

  • ブランコや乗り物で極端に怖がる、または逆にずっと回り続けたがる
  • 階段の上り下りを過剰に怖がる

固有受容覚(こゆうじゅようかく)(筋肉や関節の状態を感じる感覚)

  • 鉛筆を強く握りすぎる、または力が入らなさすぎる
  • 物を強くつかんだり、人に強くぶつかりに行ったりする

以下の表は、感覚の種類・代表的な困りごとの場面・考えられる対応のヒントを整理したものです。参考としてお使いください。

感覚過敏の種類別 困りごとと対応ヒント一覧
※ 診断を確定するものではありません。気になる項目がある場合は専門家にご相談ください。
感覚の種類 代表的な困りごとの場面 対応のヒント
聴覚 にぎやかな場所で耳を塞ぐ、掃除機や乾燥機の音に強く反応する イヤーマフや耳栓を活用する。事前に「大きな音がするよ」と見通しを伝える
視覚 蛍光灯やLEDの光を極端に嫌がる、人混みで目を細める サングラスや帽子を使う。照明を調整できる環境をつくる
触覚 服のタグや縫い目を嫌がる、触れられることを強く拒否する タグを切る・シームレス素材の服を選ぶ。触れる前に声をかける
嗅覚 給食の匂いや香水で気分が悪くなる、特定の食べ物の匂いで拒否する 無香料の製品を選ぶ。換気やマスクで匂いを和らげる
味覚 食感が少し違うだけで食べられない、特定の味や温度しか受け付けない 食べられるものから少しずつ広げる。無理強いせず安心できる食事環境をつくる
前庭覚体の傾きや動きを感じる感覚 ブランコや乗り物で極端に怖がる、階段の上り下りを過剰に怖がる 揺れの少ない遊びから少しずつ慣らす。本人が安心できるペースを尊重する
固有受容覚筋肉や関節の状態を感じる感覚 鉛筆を強く握りすぎる、人に強くぶつかりに行く 重いものを運ぶなどの活動で感覚入力を補う。力加減を遊びの中で練習する
※ 対応のヒントは一般的な例です。お子さまに合った方法は専門家と相談しながら見つけましょう。

家庭と学校でできる環境調整と伝え方

感覚過敏のあるお子さまには、「慣れさせる」より「負担になっている刺激を減らす」環境調整が、支援の出発点です。家庭でできる感覚別の工夫と、学校・園への具体的な伝え方を知ることで、今日からお子さまの困りごとを軽くする第一歩を踏み出せます。

「慣れさせる」より「守る」:家庭でできる感覚別の工夫

「いつか慣れるはず」と我慢させ続けることは、感覚過敏のあるお子さまにとって逆効果になりやすい対応です。感覚過敏は「気の持ちよう」や「慣れ」で解決できるものではなく、脳の感覚処理の特性によるもの。まずその前提を共有しておくことが大切です。

家庭でできる工夫は、感覚の種類に合わせて考えると整理しやすくなります。聴覚が敏感なお子さまには、イヤーマフ(防音保護具)や耳栓の活用が効果的です。ナーシングの支援現場でも、イヤーマフを使い始めたことで、複数の児童らが声を出して遊んでいても退室せずに過ごせるようになったお子さまの事例など、多くを経験してきました。

触覚が敏感な場合は、衣類の選び方が鍵になります。タグを取り除く、縫い目の少ないインナーを選ぶ、素材や締め付け感をお子さまと一緒に確かめるなどの積み重ねから始めてみてください。

食事については、食材の混在や匂いが苦手なケースが多く見られます。盛り付けを分けて提供する、強い匂いの食材を控えるといった配慮が、食事の場の安心感につながります。「何が苦手か」を日常の中で観察しながら、一つひとつ丁寧に対応していく姿勢が、お子さまの信頼と安心の土台になります。

学校・園への配慮依頼の具体的な伝え方

「先生に伝えたいけれど、どう言えばいいかわからない」と感じている保護者様は少なくありません。感覚過敏への配慮を学校・園に依頼するときは、「特性の説明」「具体的な場面」「お願いしたい配慮」の3点をセットで伝えることがポイントです。

伝えるタイミングは、学期の始まりや面談の機会が理想的です。緊急ではない配慮依頼ほど、落ち着いた場で丁寧に伝えると、先生側も受け取りやすくなります。相手は担任の先生が基本ですが、健康面の配慮が必要な場合は養護教諭にも同席をお願いすると、より連携が取りやすくなります。

以下は、そのままお使いいただける文例の一例です。

「〇〇(お子さまのお名前)は聴覚が敏感で、突然の大きな音や体育館のような反響する環境で強い苦痛を感じます。運動会の練習前に一言声かけをしていただけると、心の準備ができて安心して参加できます。可能であれば、耳栓の使用もご許可いただけますでしょうか」

「先生に言ったら、子どもが不利益を被るかもしれない」という不安はよくわかります。ただ、正確な情報を共有することがお子さまを守る最善の手段です。学校・園・家庭がチームとして同じ方向を向いて関わることで、お子さまの日常はより安心なものになっていきます。

伝える際は、①特性の説明、②具体的な場面、③お願いしたい配慮、の3点を事前に整理しておくと、面談もスムーズに進みます。ご自身のお子さまの状況に合わせて言葉を当てはめてみてください。

診断がなくても使える支援とナーシングの現場から

診断がなくても、支援を受けられる選択肢があります。「受診すべきか迷っている」「診断待ちで動き出せない」という状況でも、今すぐ相談できる場所があります。ここでは、ナーシングの現場知見を交えながら、感覚過敏のあるお子さまへの具体的な支援内容と、保護者様が一人で抱え込まないためのヒントをお伝えします。

児童発達支援・放課後等デイサービスで行う感覚統合アプローチ

感覚統合(かんかくとうごう)とは、目・耳・皮膚・筋肉・関節などから入ってくるさまざまな感覚情報を、脳がうまく整理・統合する働きのことです。感覚過敏のあるお子さまは、この「整理の仕組み」に特性があるため、特定の刺激を人より強くつらく感じてしまいます。

この特性に対して有効とされているのが、遊びや活動を通じて感覚の経験を積み重ねていく「感覚統合アプローチ」です。

感覚統合アプローチの流れ
1
感覚の観察
何が苦手かを把握し、お子さまの感覚特性を丁寧に見極めます
2
遊びを通じた経験の積み重ね
トランポリン・ブランコ・粘土など、楽しい活動で感覚体験を広げます
3
家庭・学校・事業所での共有
支援内容と成長の様子を関係者全体で共有し、一貫した対応につなげます

ナーシングの放課後等デイサービス・児童発達支援の現場では、個別支援計画に基づく感覚統合アプローチを取り入れています。作業療法士(OT)の知見を活かしながら、感覚統合体操やバランスボールで身体全体を使った動きを体験することで前庭覚を育てたり、粘土や布など異なる素材を段階的に触れる機会をつくって触覚への慣れをサポートしたりしています。

「なんとなく良さそうだから」ではなく、「この特性を持つお子さまにはこのアプローチが効果的、なぜなら〇〇だから」と根拠を持って支援を行うことを、私たちは大切にしています。支援の意図は保護者様にも丁寧にお伝えし、家庭・学校・事業所がチームとして同じ方向を向いて関わることを重視しています。

保護者自身が「一人で抱え込まない」ためのヒント

お子さまの感覚過敏に毎日向き合いながら、疲れを感じることは当然のことです。「自分だけが悩んでいる」「相談してもわかってもらえない」などの孤独感を抱える保護者様の声を、ナーシングの現場で数多く聞いてきました。

まずできることのひとつは、専門家に「話を聞いてもらうだけ」という入口から始めることです。療育の専門家への相談、市区町村の子育て支援窓口、同じ悩みを持つ保護者同士がつながれる場(保護者会・オンラインコミュニティなど)も活用できます。国立障害者リハビリテーションセンターや発達障害者支援センターでは、診断がなくても相談を受け付けているケースが多くあります(詳細はお住まいの自治体窓口にご確認ください)。

一人で解決しようとしなくていいのです。支援事業所への相談は、お子さまのためだけでなく、保護者様が「伴走者を持つ」ための場でもあります。ナーシングでも、保護者様のお気持ちに丁寧に寄り添うことを大切にしています。どうか一歩、声に出してみてください。

支援の使い方:受給者証の取得から相談までの流れ

受給者証(じゅきゅうしゃしょう)とは、お子さまが児童発達支援や放課後等デイサービスなどの障害福祉サービスを利用するために必要な、自治体が発行する証明書です。この受給者証があることで、サービス利用時の費用の一部が公費でまかなわれます(利用料の原則9割を自治体が負担。負担上限月額は世帯収入によって異なります。出典:厚生労働省「障害児の利用者負担」)。

「診断がないと受給者証は取れないの?」——この疑問を持つ保護者様は非常に多いのですが、受給者証の取得に医師の診断書は必ずしも必要ではありません。お住まいの市区町村が「支援が必要」と判断した場合に発行されるため、診断待ちや受診前の段階でも申請・相談が可能なケースがあります。なお、障害者手帳をお持ちでない場合は、医師や専門家による意見書の提出が求められることが多くあります。条件や手続きの流れは自治体によって異なるため、詳細はお住まいの窓口にご確認ください。

以下に、相談から利用開始までのおおまかな流れをご紹介します。

  1. 市区町村の窓口または支援事業所に相談する(まずここから始めてください)
  2. 「受給者証の申請」を行う(申請書類・聞き取りなどは自治体によって異なります)
  3. 自治体の審査・判定(支援が必要と認められると受給者証が発行されます)
  4. 利用する事業所と契約する(ナーシングへのご相談・見学もこのタイミングで可能です)
  5. サービス利用開始

「まずどこに電話すればいいかもわからない」という方も、ナーシングへご連絡いただければ、地域の窓口や手続きの進め方についてご案内できます。

よくある質問(感覚過敏の子どもを育てる保護者向けQ&A)

毎日の対応のなかで「これはどういうこと?」「どうすればいい?」と感じた時にすぐ参照できるよう、保護者様がよく検索される疑問をQ&A形式で整理しました。気になる質問からお読みいただけます。

感覚過敏があると必ず発達障がいなのですか?

感覚過敏があっても、必ずしも発達障がいとは限りません。診断のないお子さまを含め、幅広いお子さまに見られる特性のひとつです。

ASDやADHDのあるお子さまに感覚過敏を伴う割合は高く、複数の研究では60〜90%と報告されています。一方で、発達障がいの診断がないお子さまにも感覚過敏は広く見られます。まず専門機関に相談することをお勧めします。

診断なしでも放課後等デイサービスは使えますか?

診断書がなくても、受給者証があれば放課後等デイサービスを利用できる場合があります。受給者証の取得に医師の診断書が必須かどうかは自治体によって異なります。

「もしかして感覚過敏かも」「日常生活で困りごとがある」という段階でも相談は可能です。まずはお住まいの市区町村の窓口、または放課後等デイサービスや児童発達支援の事業所にご相談ください。ナーシングでも、受給者証の取得に関するご相談をお受けしています。

感覚過敏は成長すれば自然に改善しますか?

感覚過敏は、お子さまによって変化の仕方が異なります。成長とともに和らぐケースがある一方で、感覚過敏の特性自体がなくなるわけではないことも多くあります。

適切な支援と環境調整によって、日常生活の困りごとが軽減するケースは多く見られます。自然に治るのを待つより、環境調整と支援を組み合わせる方が、お子さまの生活の質を高める近道です。幼いうちから適切なアプローチを始めるほど、効果が出やすい傾向があります。

学校に感覚過敏のことをどう伝えればいいですか?

お子さまの具体的な困りごとと、してほしい配慮を分けて伝えると伝わりやすくなります。「どんな場面で」「どんな状態になるか」「どんな配慮をお願いしたいか」の3点をセットで伝えるのがポイントです。

たとえば、「音が大きい場所でパニックになりやすいので、運動会の練習前に声かけをお願いしたい」のように具体的に伝えると、学校側も対応しやすくなります。うまく言葉にできないと感じたときは、ナーシングのスタッフに相談いただければ、一緒に伝え方を整理することもできます。

毎日対応するのに疲れた時はどうすればいいですか?

疲れを感じることは、それだけ真剣に向き合っている証です。一人で抱え込まず、まず誰かに話してみてほしいと思います。

相談できる場所として、支援事業所・地域の保護者会・かかりつけの医療機関などが挙げられます。ナーシングでは、お子さまのためだけでなく、保護者様自身のお気持ちにも丁寧に寄り添っています。「相談するだけでも大丈夫」という気持ちで、どうかお気軽にお問い合わせください。

まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございます。お子さまの「困った行動」には必ず理由があります。感覚過敏は脳の感覚処理の特性によるものであり、わがままでも育て方の問題でもありません。この記事が、「うちの子にも対処法がある」という気づきと、一歩踏み出すきっかけになれば幸いです。この記事の重要なポイントを改めてご確認ください。

  • 感覚過敏は「発達障がい=確定」ではなく、診断のないお子さまを含む幅広い子どもに見られる特性であり、ASD・ADHDのあるお子さまの60〜90%に感覚の問題が見られるという研究報告がある一方で、診断の有無にかかわらず適切な支援が有効である
  • 「慣れさせる」より「負担になる刺激を減らす」環境調整が支援の出発点であり、イヤーマフの活用・衣類の素材選び・食事の盛り付け工夫など感覚の種類に合わせた小さな対応が、お子さまの日常の安心感を大きく変える
  • 診断書がなくても受給者証を取得し、児童発達支援・放課後等デイサービスを利用できるケースがあるため、「もしかして感覚過敏かも」という段階でも市区町村の窓口やナーシングへの相談から始めることができる

感覚過敏のあるお子さまへの支援は、家庭・学校・専門機関がチームとして同じ方向を向くことで、より確かな効果を発揮します。「一人で抱え込まなくていい」という言葉を、どうか今日からご自身に許してください。まずは話を聞いてもらうだけで構いません。ナーシングでは、お子さまの支援はもちろん、保護者様ご自身のお気持ちにも丁寧に寄り添っています。勇気の一歩が、親子の毎日を変えていきます。