家庭でできる支援・関わり方
広報 2026.06.05

レスパイトケアとは?障がいのある子どもを育てる保護者が休んでいい理由と使える制度

レスパイトケアとは?障がいのある子どもを育てる保護者が休んでいい理由と使える制度

「自分が休んだら、子どもがかわいそう」と思いながら、今日も限界まで走り続けている保護者の方がいます。支援者や行政窓口から「レスパイトケアを使ってみては」と勧められても、制度の意味もどこに相談すればいいかも、なかなかわからないまま時間が過ぎてしまうこともあるのではないでしょうか。

レスパイトケアとは、「ケアする人のためのケア」です。障がいのある子どもを育てる保護者が、心身の余裕を取り戻すために休息を得ること——それはお子さまへの愛情の放棄ではなく、長く笑顔でそばにいるための、責任ある選択です。

この記事では、高齢者介護向けの情報ではなく、障がいのあるお子さまを育てる保護者の方が実際に使える制度やサービスを、障がい福祉の文脈から整理しています。利用開始までの具体的な流れ、よくある疑問への回答まで、今日から動き出せる情報をまとめました。

レスパイトケアとは「ケアする人のためのケア」

レスパイトケアとは、ケアをする人が休息をとるための支援です。「障がいのあるお子さまを育てる保護者が、心身の余裕を取り戻すために一時的な休息を得ること」。それがその本質です。高齢者介護の文脈で語られることも多い言葉ですが、ここでは障がいのあるお子さまを育てる保護者に向けて、その意味と必要性をお伝えします。

英語「respite=休息」が示す本来の意味

「respite(レスパイト)」は英語で「一時的な休息・猶予」を意味します。つまりレスパイトケアとは、支援される側(お子さま)だけでなく、支援する側(保護者)も大切にされる仕組みです。

日本では1976年に「心身障害児(者)短期入所事業」がレスパイトケアの制度的な起点となり、現在は障害者総合支援法・児童福祉法に基づく複数の制度として整備されています。「ケアをする人を支える」という発想が制度化された意義は、今も変わっていません。

障がい児の保護者にとって休息が必要な理由

障がいのあるお子さまを育てる保護者が置かれる状況は、24時間対応の介助、きょうだいへの支援、孤立感など、複合的な重さを伴うことが少なくありません。疲れを感じることは、それだけ真剣にお子さまと向き合ってきた証です。

厚生労働省「医療的ケア児者とその家族の生活実態調査報告書」(2020年)によると、急病や緊急の用事ができた際に医療的ケアを必要とする子どもの預け先がないと答えた家族は82.7%に上りました。身体的な疲労だけでなく、精神的な孤立感も積み重なりやすい環境です。

保護者が倒れてしまえば、お子さまの生活そのものが揺らいでしまいます。だからこそ「休むこと」は、持続可能なケアを続けるための選択であり、お子さまのためにもなるのです。

休むことは愛情放棄ではなく責任ある選択

「自分が休んだら、子どもがかわいそう」——その気持ちは、深い愛情の表れです。ただ、その罪悪感と正面から向き合ってほしいことがあります。

休息をとることで保護者自身のQOL(生活の質)が回復し、より長く・より笑顔でお子さまのそばにいられる。これは感情論ではなく、慢性的な疲弊が介護の質に影響することを示す研究知見とも一致する考え方です。

ナーシングの放課後等デイサービスの現場では、「もっと早く相談すればよかった」とおっしゃる保護者の方に多く出会ってきました。休むことは、長く安定してお子さまを支えていくための、責任ある選択です。

以下の図は、保護者の心身の余裕とケアの質の関係を示したものです。

障がいのある子どもの保護者が使えるレスパイトの制度とサービス

障害者総合支援法・児童福祉法に基づき、障がいのある子どもを育てる保護者が活用できるレスパイトの制度は複数あります。短期入所(ショートステイ)・日中一時支援・居宅介護・放課後等デイサービスが代表的な選択肢です。いずれも受給者証があれば原則1割負担で利用でき、「どれが自分に合うか」を知るだけで、毎日の重さが少し変わってくるかもしれません。

短期入所(ショートステイ)でまとまった休息をとる

短期入所(ショートステイ)は、お子さまが施設に数日間泊まりながら支援を受けられる制度です。保護者の入院・疲弊回復・冠婚葬祭など、幅広い理由で利用できます。

利用できる施設は、障がい者支援施設・共同生活援助(グループホーム)・医療型短期入所事業所などで、お子さまの障害の種類や状態に応じて選びます。サービス利用料は原則1割負担(世帯収入に応じた上限あり)で、食費・光熱費等の実費は別途かかります。

利用の流れはおおむね3段階です。①市区町村の障害福祉窓口または相談支援専門員に相談、②受給者証に短期入所の利用日数が支給決定される、③希望する事業所と契約して利用開始。事業所の空き状況や受け入れ条件は施設によって異なるため、早めに複数の事業所へ問い合わせることをお勧めします。

日中一時支援・居宅介護で日常の隙間に休む

日中一時支援と居宅介護(ホームヘルプ)は、いずれも障害者総合支援法に基づくサービスで、数時間単位で使える日常的なレスパイトです。

日中一時支援は、日中の一定時間だけお子さまを事業所で見守るサービスです。「週2回、午後の3時間だけ預けて、自分の通院や休息に充てる」という使い方が可能で、毎週少しずつ休める習慣をつくる手段として活用されています。居宅介護(ホームヘルプ)はヘルパーが自宅を訪問してお子さまを支援するサービスで、保護者が同じ空間にいながら別室で休んだり、外出したりする時間を生み出せます。

「まとまった休みを取るほどではないけれど、毎日がしんどい」と感じているときこそ、この2つのサービスが力を発揮します。まずは相談支援専門員や市区町村窓口に「少しだけ休みたい」と一言伝えることから始めてみてください。

放課後等デイサービスがレスパイトとして機能する理由

放課後等デイサービスは、療育・余暇・社会参加を目的とした児童福祉法に基づくサービスですが、保護者の平日の放課後に休める時間を確保するレスパイトとしても実質的には機能しています。

お子さまが安心して過ごせる居場所があることで、保護者はきょうだいの対応・家事・自分の通院・就労など、日常に必要なことへ時間を使えます。厚生労働省「令和5年社会福祉施設等調査」(2024年12月公表)によると、2023年9月の放課後等デイサービス利用実人員は約55.7万人に上り、多くの家庭の日常的な負担軽減を支えています。

ナーシングの放課後等デイサービスでは、「根拠のある療育」を大切にしています。「なんとなく良さそう」ではなく、お子さまの特性に合った支援の理由をスタッフが説明できる状態を目指しているため、「預けている間、何をしているのかわからない」という不安を抱えずに利用していただける環境を整えています。

以下の表は、ここまで紹介した4つのサービスを比較したものです。

障がい児の保護者向け レスパイトサービス4種 比較表
比較軸 短期入所
(ショートステイ)
日中一時支援 居宅介護
(ホームヘルプ)
放課後等
デイサービス
利用単位 泊単位
(1泊〜連続利用)
時間単位
(日中の時間帯)
時間単位
(訪問時間に応じ)
時間単位
(放課後・休校日)
主な利用場面 介護者の疾病・急用・
レスパイト(宿泊型)
日中の見守り・
保護者の休息
自宅での入浴・
食事・移動支援
療育・余暇支援と
保護者の平日休息
根拠法 障害者総合支援法
第5条第8項
障害者総合支援法
(地域生活支援事業)
障害者総合支援法
第5条第2項
児童福祉法
第6条の2の2第4項
受給者証の要否 必要
(障害福祉サービス受給者証)
必要
(市区町村発行)
必要
(障害福祉サービス受給者証)
必要
(障害児通所受給者証)
※ 日中一時支援は市区町村の地域生活支援事業のため、利用基準・手続きは自治体によって異なります。 ※ 放課後等デイサービスは障害者手帳がなくても、受給者証があれば利用できます。

受給者証があればサービスを低負担で利用できる

受給者証とは、障がい福祉サービスを利用するために必要な証明書で、お住まいの市区町村が発行します。この証明書を持っていることで、上記のサービスを原則1割負担で利用できます。

世帯収入に応じた「負担上限月額」も設定されており、市町村民税非課税世帯の場合は上限が0円となるケースもあります(所得区分によって異なります)。1回の放課後等デイサービス利用では数百円〜1,000円程度の自己負担になることが多く、上限月額の範囲内であれば複数回利用しても費用は変わりません。

受給者証の申請は市区町村の障害福祉窓口で行い、支給決定まで自治体によっては概ね1〜2か月程度かかります。まずは「どんなサービスを使えるか聞きたい」と窓口に問い合わせるだけでも、選択肢が広がります。

レスパイトケアを今日から始める相談先と利用の流れ

まず「市区町村の障害福祉課」または「相談支援事業所」に連絡することから始まります。「どこに相談すればいいのか」という一歩が踏み出せずにいる保護者の方は、決して少なくありません。窓口への連絡から受給者証の取得、事業所との契約まで、一つひとつのステップを確認してみてください。

まず相談すべき2つの窓口

レスパイトケアの利用を始めるにあたって、主な相談窓口は二つあります。「市区町村の障害福祉課」と「相談支援事業所」です。

市区町村の障害福祉課は自治体が設置する公的な窓口で、利用できるサービスの種類や手続きの流れを案内してもらえます。相談支援事業所は相談支援専門員が配置された事業所で、サービスの選び方や計画づくりを一緒に考えてもらえます。

どちらに連絡するか迷う場合でも、どちらから相談しても問題ありません。「レスパイトを使いたいのですが、まず何をすればよいですか」と伝えるだけで、担当者が次のステップを案内してくれます。うまく説明できるか不安に感じる必要はありません。

受給者証の申請から利用開始まで3つのステップ

障がい福祉サービスの利用には、受給者証の取得が必要です。手続きは大きく3つのステップで進みます。

①窓口への相談・申請(目安:数日〜2週間程度) 市区町村の障害福祉課または相談支援事業所に相談し、サービス利用の申請を行います。お子さまの状況や必要な支援の内容を確認する面談が含まれる場合があります。

②受給者証の発行(目安:2週間〜2か月程度) 申請後、自治体による審査を経て受給者証が発行されます。期間は自治体の審査状況によって大きく異なりますので、お住まいの窓口で目安を確認しておくと安心です。

③事業所との契約・利用開始 受給者証を持参して希望する事業所と契約し、利用をスタートします。費用は原則1割負担で、世帯収入に応じた負担上限月額が設定されています。住民税非課税世帯など所得が低い世帯では、自己負担が0円になる場合もあります(厚生労働省「障害者の利用者負担」)。

手続きが複雑に感じられるかもしれませんが、相談支援専門員が一緒に進めてくれるため、一人で抱え込む必要はありません。放課後等デイサービスをすでにご利用中の場合は、その事業所のスタッフへの相談も入口になります。なお、自治体によって手続きの詳細が異なる場合がありますので、お住まいの窓口に確認されることをお勧めします。

利用開始前に知っておきたい子どもへの配慮

新しい環境への適応に時間がかかるお子さまにとって、初めての施設は不安を感じる場所になることがあります。これは自然なことであり、保護者の方が「子どもへの影響が心配」と感じるのも、ごく当然の気持ちです。

そのような不安を和らげるために、多くの事業所では段階的な慣らし利用を取り入れています。最初は短時間からスタートし、お子さまのペースに合わせて少しずつ滞在時間を延ばしていく方法が一般的です。事前に施設を見学することで、お子さまが環境に親しみを持てるよう準備することもできます。

ナーシングの現場でも、利用開始前の見学やスタッフとの顔合わせを大切にしています。お子さまの特性や不安の様子は、遠慮なく事業所のスタッフにお伝えください。保護者の方とスタッフが情報を密に共有しながら支援することが、お子さまの安心につながります。

よくある質問(レスパイトケアに関するQ&A)

レスパイトケアについて、保護者の方からよく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。感情的な不安から手続き的な疑問まで、一つひとつお答えします。

自分が休むことに罪悪感があります。本当に利用してもいいですか?

はい、ぜひ利用してほしいと思います。保護者様が休息をとることは、お子さまへの愛情の放棄ではありません。長く笑顔でそばにいるための、責任ある選択です。疲れを感じているのは、それだけ真剣にお子さまと向き合ってきた証でもあります。レスパイトケアはまさに、そのためにある制度です。どうか遠慮なく、ご自身をいたわる時間を持ってください。

放課後等デイサービスはレスパイトケアになりますか?

はい、放課後等デイサービスはレスパイトケアとして機能します。お子さまが療育を受けている間、保護者様は休息や自分の時間を持てます。お子様の未来につながる療育と保護者のレスパイト、両方の役割を同時に果たす点が特徴です。就労・きょうだい対応・通院など、保護者様それぞれの事情に合わせて活用できます。こども家庭庁・国保連のデータによると、2025年1〜3月の放課後等デイサービス利用者数は月平均約37.5万人に上り、多くの保護者の日常的な負担軽減を支えています。「預ける」のではなく「お子さまが個々の課題に合わせた発達支援を受けられる場所で、保護者様も充電できる」という考え方で利用してみてください。

受給者証がなくてもレスパイトのサービスを使えますか?

障害福祉サービスを低負担で利用するには受給者証が必要です。ただし、まず窓口に相談するだけで手続きを始められます。受給者証の申請と並行して、相談支援事業所がサービス選びをサポートしてくれます。自治体によっては、受給者証なしで利用できる日中一時支援や子育て支援事業が設けられている場合もありますので、「受給者証なしで使えるサービスがあるか」とお住まいの市区町村の障害福祉窓口に問い合わせてみることをおすすめします。

以下に、相談から利用開始までの流れをまとめました。

利用開始までの流れ
1
相談する
市区町村窓口や
相談支援事業所へ
2
受給者証を
申請・取得する
概ね1〜2か月
3
事業所と契約して
利用開始
1割負担、上限月額あり

子どもが環境の変化で不安定になることはありますか?

環境の変化に敏感なお子さまの場合、最初は不安定になることもあります。ただ、それは決して珍しいことではありません。慣らし利用や事前見学で少しずつ慣れていく方法が有効です。支援スタッフと事前にお子さまの特性を共有しておくことも、安心して利用するための大切な準備です。不安なことは遠慮なく事業所にお伝えください。スタッフと一緒に、お子さまのペースで進めていくことができます。

どこに相談すればレスパイトケアを始められますか?

まずは市区町村の障害福祉課か、お近くの相談支援事業所にご連絡ください。放課後等デイサービスを利用中の場合は、その事業所に相談するのも一つの方法です。「どこに相談すればいいかわからない」という段階からでも、一緒に整理することができます。ナーシングでも、サービス利用の有無に関わらずご相談をお受けしています。「まず話を聞いてほしい」という段階から来てくださる保護者様も多く、そこから次の一歩が見えることがほとんどです。お気軽にご連絡ください。

まとめ

この記事をお読みいただき、ありがとうございます。レスパイトケアとは「ケアする人のためのケア」であり、保護者の方が休息をとることは愛情の放棄ではなく、長くお子さまのそばにいるための責任ある選択です。短期入所・日中一時支援・居宅介護・放課後等デイサービスなど、受給者証があれば原則1割負担で使える制度を、ぜひ知っておいてください。

  • レスパイトケアとは保護者が一時的な休息をとるための支援制度であり、障害者総合支援法・児童福祉法に基づく短期入所・日中一時支援・居宅介護・放課後等デイサービスを受給者証(原則1割負担)で利用できる
  • 放課後等デイサービスは療育とレスパイトを同時に果たすサービスであり、2025年1〜3月の利用者数は月平均約37.5万人(こども家庭庁・国保連データ)に上り、保護者の日常的な負担軽減を広く支えている
  • レスパイトケアを始めるには、まず市区町村の障害福祉課または相談支援事業所に「休息のための支援を知りたい」と一言伝えるだけでよく、受給者証の申請から利用開始まで相談支援専門員が一緒に進めてくれる

「自分が休んでいいのだろうか」という気持ちは、深い愛情の表れです。しかし厚生労働省の調査では、医療的ケアを必要とする子どもの預け先がないと答えた家族は82.7%にのぼり、保護者の孤立と疲弊は多くの家庭に共通する課題です。保護者の心身の余裕がお子さまへの関わりの質を高め、それが安定した日常へとつながる——レスパイトケアはその好循環を生み出す入口です。まずは一歩、窓口への連絡から始めてみてください。